Q.道路料金所付近における衝突事故での過失割合はどうなりますか。

[料金所,過失相殺]

A.


1 本線から料金所に至るまでの間

ETCレーンに入るか否か迷って,左右に進路変更をする迷い運転をして追突された場合は,被追突車両にも過失があるとされます(東京地裁 平成18年8月9日判決は,3割の過失としています。)。

一方,前方の車両の流れも変化しますから,ETCレーン内での急停止は一般車両通行帯における前車の急激な停止の場合と同視することはできないとして追突として
被追突者には過失がないと考えられます(横浜地裁 平成19年9月28日判決)。

しかし,料金所付近では車両が変則的な動きをする事態もありうるので左右の車両の動きに注意する必要が出てきます。
左から他の車両に寄られて衝突された原告にも注意義務違反があるとして1割の過失相殺をした判決(名古屋地裁 平成21年2月18日)があります。

もっとも,前方不注視のまま漫然と進路変更を行い,先行していた車両に衝突したような場合には,
追突車の一方的な過失となると考えられます(千葉地裁松戸支部 平成26年3月27日)。


2 料金所レーン内

料金所レーン内では,先行する車両に対する追突形態になります。
原則は,追突車両の一方的な過失となります。

若干判断が分かれるのは,先行する車両がカードの挿入に関して忘れていたり手間取っている場合です。

被追突車にも過失相殺をした判決(東京地裁 平成21年11月5日)と否定した判決(大阪地裁 平成22年4月22日)があります。

 

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【参考判決】
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(料金所手前)


高速道路料金所手前で,原告乗用車がETCレーンに入るか否か迷って,停止寸前の速度で右,左と進路変更中に被告バスが追突したもので,高速道路の渋滞していない料金所手前での追突であるが,原告は回避措置を取らなかったとし,原告に30%の過失相殺をした判決
東京地裁 平成18年8月9日判決<出典>自動車保険ジャーナル・第1720号


高速道路料金所のETCレーンで急停止したX車にY車が追突した事案につき,ETCレーン内での急停止は一般車両通行帯における前車の急激な停止の場合と同視することはできないとして追突したY車の100%過失とした判決
横浜地裁 平成19年9月28日判決<出典> 自動車保険ジャーナル・第1722号


朝の高速道路料金所付近で同一方向進行中の原告自動二輪車と被告乗用車の衝突について,ETC非装着の被告がETC料金所を避けるため左側の原告車に気付かず方向指示器を点灯させなかった状態で左に寄ったため衝突したが,料金所付近では車両が変則的な動きをする事態もありうるとして原告に1割の過失相殺をした判決
名古屋地裁 平成21年2月18日判決<出典>自保ジャーナル・第1828号


高速道路の料金所近くで,原告乗用車の右側後部と被告乗用車の左側前部とが接触した事案について,被告は,進路変更する際には,前方車両の動静を注視し,その安全を確認して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り,料金所で支払う金に気を取られ,前方不注視のまま漫然と進路変更を行い,先行していた原告車両の右側後方リアバンパー部分付近に,被告車両の左側フロントバンパー,フロントフェンダー部分付近を,追突接触させたことが認められる。
すると,本件事故の責任原因は被告にあり原告には過失は認められないとした判決
千葉地裁松戸支部 平成26年3月27日判決<出典>自保ジャーナル・第1926号

 

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(料金所レーン内)

高速道路料金所ETCレーンで原告乗用車に被告普通貨物車が追突した事案につき,料金所機器には故障なく,原告のカード不挿入等考えられるが,車間距離の十分な保持を後続車に要求されている等から,原告の事由は斟酌されるべきではないと,被告の一方的な過失とした判決
横浜地裁 平成20年12月19日判決<出典>自動車保険ジャーナル・第1790号


高速道路の出口付近ETCレーンにおいて,X普通貨物車にY大型貨物車が追突した事案につき,ETC車線では20㌔㍍以下と安全確保が義務付けられており,バーが上がらなかった原因については,必ずしも判然としないが,たとえXがカード書き込みエラーにより急ブレーキをかけたとしても,Xの通行状況を斟酌するのは相当ではなとして,Xへの過失相殺を否定した判決
東京地裁 平成21年7月14日判決<出典>自保ジャーナル・第1814号

高速道路料金所ETCレーン内での原告乗用車に被告乗用車の追突について,左からの原告車の急な割り込みが遠因となっているとしても,割り込みは被告車両の減速を促すものであるとして,本件事故とは関係がないとした。
そして,ETCゲート内では,必ずノンストップで通過できるとは限らないので,20㌔㍍以下に減速して進入すると規定されていることに違反した被告に専らの過失があるとした判決
横浜地裁 平成21年5月20日判決<出典>自保ジャーナル・第1814号


愛知県内の東名高速道路においてETCが搭載されている原告普通貨物車がETC車線上を走行したところ,料金所のゲートのバーが上がらなかったため減速したところ,後続の被告大型貨物車が衝突した事案につき,たとえバーが上がらなかった原因が判然としないながらも,後続車は原告車の停止まで想定してETC車線を通行しなければならず,必要な車間距離をとることなく追突した被告車の一方的過失を認めた判決
東京地裁 平成21年7月14日判決<出典>交民集42号4号882頁


高速道路料金所ETCレーンで開閉棒直前で停止したX普通貨物車に後続のY乗用車が追突した事案について,追突されたXにはETCカードの挿入を怠った過失があるとしてETC車線で停止したX車に2割の過失相殺をした判決
東京地裁 平成21年11月5日判決<出典>交民集42巻6号1464頁


高速道路料金所ETCゲート内における追突事故について,高速道路本線上と異なり,利者はETCシステム利用者の注意義務を負うとし,後続車は徐行,車間距離をとって「追突しないような措置を講ずべき注意義務が課されているとしてETCカード入れ忘れで停止していたX車に追突したY車の過失10割と認めた。
大阪地裁 平成22年4月22日判決<出典>交民集43巻2号539頁

 

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