Q.中心性脊髄損傷等の非骨傷性脊髄損傷が,後遺障害(後遺症)として認められるかどうかの分かれ道は何ですか。

[中心性脊髄損傷,後縦靱帯骨化症,画像所見,素因減額,脊柱管狭窄]

A.

1 非骨傷性の脊髄損傷

骨折・脱臼のない場合の脊髄損傷を非骨傷性の脊髄損傷と言います。
中心性脊髄損傷の場合もこれに含まれます。

裁判例においても,非骨傷性の脊髄損傷の存在が認定されます。

 

2 認定の指標

一般的に脊髄損傷の発生を肯定するためには,

①画像所見上の裏付け

②神経学的な異常所見の存在と画像所見との整合性

③症状の推移

が,認定の指標と言うべきものです。


3 非骨傷性脊髄損傷認定例と否定例

(1)MRIでの画像のどこを見るか
認定例としては,
MRIで脊柱管狭窄を認め,特に一部では脊髄圧迫を中程度に認め,さらに重度の狭窄を認め,
脊髄高輝度領域をMRI,T2強調像で認められるとして,

画像所見を重視していることがうかがえます(名古屋地裁 平成22年4月23日判決)。

しかし,否定例を見ると,
脊椎管内への膨隆(軽度ではあるが連続した後方へのふくらみであり椎間板ヘルニアとはいい難い程度)が認められる程度であれば,
神経の圧迫もないとして否定されます(大阪地裁 平成23年3月28日判決)。

頸髄損傷の所見である髄内輝度変化等の器質的な異常知覚が何ら認められないこと,
CT検査やMRI検査の結果において,
脊髄や神経根に対する圧迫所見等の外傷的変化が見られず否定しています(東京地裁 平成26年3月28日判決)。

(2)MRIの読影が決定打にならない場合はどうなるか。

認めている例では,
MRIの読影については医師の間でも意見が分かれるが,
少なくとも2人の医師が,C4/5高位に高輝度変化を認めていること,
これに対応する神経学的所見も得られていること,
急性期に確たる神経学的所見に乏しく,慢性期にこれが明らかになった場合も認めております(京都地裁 平成23年6月10日判決)。

MRI画像上,明らかな髄内輝度変化は認めないが
高エネルギー交通外傷では脊柱管狭窄所見がなくとも頸髄損傷が生じる可能性は否定されないが,
脊柱管狭窄所見があることは,外傷時に脊髄損傷が生じたことの傍証と成り得るものである。
画像所見は,中心性頸髄損傷との診断に矛盾せず
逆に,四肢麻痺症状を説明する他の病態もないため,
本件事故によって中心性頸髄損傷が生じて後遺障害の四肢麻痺の原因となっていると判断される
(大阪地裁 平成26年3月26日判決)としているものがあります。

この事例は,36歳というまだ若い年齢であったことも影響したと推定できます。
そして,自賠責7級から後遺障害3級と認定した変更した上で,素因減額もしなかった事例です。

(3)素因がある場合
事故以前から後縦靱帯骨化症に罹患し,これによる強度の脊柱管狭窄があり,
これが脊髄損傷の受傷及び治療や後遺障害の残存に寄与したものというべきであること,
脊髄等の骨折や脱臼等の明らかな骨傷を負った突により7.3㍍先の路上にはね飛ばされるなど,
事故による衝撃もそれなりに強度であったと推認されることに照らすと,
本件事故前に後縦靱帯骨化症に伴う症状が発症していなくとも,
損害の公平な分担の見地からは素因減額がなされるべきであり,その割合は1割とするのが相当である。
(名古屋高裁 平成26年11月13日判決)

 

4 結論

非骨傷性脊髄損傷の認定した裁判例においても,「何らかの異常所見」「神経学的な異常」ということのみで認定しているものではなく,
MRI等の画像所見もしくは,その検査結果から脊髄内の器質的変化(病変)を推認できるだけの事実を要求していると言えます。

そして後者の場合にはさらに,素因からの脊髄損傷発症にいたる迄のメカニズムが説明できるかあるいは,
事故直後の初期症状を重視しているものであると思われます。

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