Q.高次脳機能障害を残すびまん性軸索損傷の画像上における特徴はありますか。また,小児はどうですか。

[びまん性脳損傷,びまん性軸索損傷,小児,強調画像,画像所見,脳内血腫,脳室拡大]

A.

受傷当日に点状出血等の所見があることもありますが,多くは画像所見は「正常」です。
しかし,慢性期画像において全般性脳室拡大の程度が「脳外傷による高次脳機能障害」を反映するとされています。
だが,これには,すべての症例において所見が認められるかについては医学的にも議論があるようです。
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なお,詳細は,続きをご覧ください。

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1 慢性期画像はどういうものですか。(クリックすると回答)

全般性脳室拡大の程度が「脳外傷による高次脳機能障害」を反映するとされています。
すなわち,そのような症例では,側脳室から第4脳室に至る脳室が全般的に拡大します。

頭部衝撃によって白質の神経線維(軸索)がびまん性に傷害され間引きされた結果,白質の体積が減少して,代償性に脳室が拡大することは,先行する知見が得られています。

(「交通事故で多発する脳外傷による高次脳機能障害とは」益澤秀明著 新興医学出版社p6より)

しかし,次のような医学的見解も示されています。なお,こちらへ (リンク)

びまん性脳挫傷の慢性期画像所見として脳室拡大は代表的所見の一つです。
外傷性脳損傷後に脳室拡大が認められたならば,前頭葉あるいは側頭葉が萎縮した証明となり得るために「高次脳機能障害が存在する」ということになるが,その逆として「脳室拡大がないので高次脳機能障害ではない」 ということは論理的には成り立たないと考えられます。

脳室拡大だけが唯一高次脳機能障害の証明となり得るという主張があるものの,臨床的にはその例外の症例が少なからず存在するとされているのです。
(「脳神経外科学Ⅱ 太田富雄編 金芳堂 p1782」 より)

2 受傷当日の脳画像の重要性とは何ですか。(クリックすると回答)

(1)診断と後遺障害の関係で
頭部外傷直後に脳内点状出血や脳室出血が認められれば,びまん性軸索損傷と診断できるとされています。さらに脳外傷による高次脳機能障害を後遺しやすいと言えます。
しかし,受傷直後の脳画像は「正常」のこともあります。つまり微細血管損傷を伴わなければ,びまん性軸索損傷のみでありCT画像には写らないのです。
ただし,受傷直後に意識障害があれば,当日の脳画像が「正常」であっても,びまん性軸索損傷である可能性が高いとされています。

(2)治療後の経過観察の関係で
受傷当日の脳画像は,仮に「正常」であったとしても,受傷前の脳室サイズを示しているものであり,その後の脳室拡大を診断する代用となるために重要なのです。
あるいは,古い脳挫傷痕が発見されることもあり得ます。
(「交通事故で多発する脳外傷による高次脳機能障害とは」益澤秀明著 新興医学出版社p6,8より)

3 急性期脳画像のポイントは何ですか。(クリックすると回答)

脳内点状出血はそのまま消える,あるいは,周囲に低吸収量を残して消えることもあれば,次第に拡大して脳内血腫に成長することもあります。脳室出血や迂回槽クモ膜下出血などは次第に吸収されます。
亜急性期には,多くの症例でみられるように,頭蓋骨と脳表との間に液が貯留しやすい。クモ膜下腔,あるいは,硬膜下腔の液貯留です。
MRIのT2強調画像で腔内にflow voidを見ればクモ膜下腔と判明しますが,一般には区別しないで脳外液貯留と言います。
多くは,慢性期までに消退しますが,一部は慢性硬膜下血腫に発展して,その時点で二次性びまん性脳損傷を起こすこともあります。
なお,局在性脳損傷も合併しやすいとされています。
二次性びまん性脳損傷は,急性期に呼吸障害による重度の低酸素状態や高度の循環不全が続くことによっても生じます。これが低酸素脳症 です(リンク)。
(「交通事故で多発する脳外傷による高次脳機能障害とは」益澤秀明著 新興医学出版社p6,7より)

4 高次脳機能障害と脳室拡大の関係はありますか。(クリックすると回答)

びまん性脳挫傷の慢性期画像所見として脳室拡大は代表的所見の一つです。

外傷性脳損傷後に脳室拡大が認められたならば,前頭葉あるいは側頭葉が萎縮した証明となり得るために「高次脳機能障害が存在する」ということになるが,その逆として「脳室拡大がないので高次脳機能障害ではない」 ということは論理的には成り立たないと考えられます。

脳室拡大だけが唯一高次脳機能障害の証明となり得るという主張があるものの,臨床的にはその例外の症例が少なからず存在するとされているのです。

以上「脳神経外科学Ⅱ 太田富雄編 金芳堂 p1782」 より

「脳室拡大がないので高次脳機能障害ではない」は論理的には成り立たないということは,言い換えれば「脳室拡大の画像がなくても事故と高次脳機能障害との因果関係は認められ得る。」となります。
自賠責あるいは訴訟実務においても,同様に考えられます。

しかし,一定の意識障害が存在することが事故との因果関係を判断する最重要な要件となっています。

5 小児にもびまん性軸索損傷・びまん性脳損傷は起こりえますか。(クリックすると回答)

かつては成人に比較して典型例は少ないと言われていましたが,相当数が存在して,学齢期になると増えるとされています。

受傷直後から強い意識障害を呈するとされています。 CT画像では,特徴的な所見に乏しいとされています。
ただし,脳深部の点状出血や軽度のくも膜下出血,脳室内出血などを見ることがありますが,強い意識障害を説明しうるものではないとされているようです。
びまん性脳腫脹を伴わなければ,頭蓋内圧亢進を来しにくいために,通常死亡率は低いものの,生存した場合でも様々な程度の発達遅延・高次脳機能障害を残すとされています。
「脳神経外科学Ⅱ 太田富雄編 金芳堂 p1761」

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