Q.過失相殺の修正要素としての「著しい過失」「重過失」とは何ですか。

[著しい過失,過失割合,過失相殺,重過失]

A.

想定されている基本的な過失を超えるような過失が「著しい過失」ですが,それよりも更に重い,故意に比肩する重大な過失を「重過失」といいます。

基本過失割合の修正要素となります。

そして,それぞれについて類型化がされています。

「著しい過失」「重過失」についても,車両一般・単車特有・自転車特有のものがあります。

 

1 過失相殺とは何ですか。   (クリックすると回答)


衝突形態等により基本的な過失割合(相殺率)が定まっています。
そして,その過失相殺率を定めるに当たっては通常想定される過失を考慮に入れています。
したがって,それを超えるような過失が「著しい過失」ですが,それよりも更に重い,故意に比肩する重大な過失を「重過失」といいます。

つまり,基本的な過失割合(相殺率)を修正するものです。
原則として,「著しい過失」が10%,「重過失」が20%の修正となります。

なお,「著しい過失」と「重過失」の両方に該当する事由がある場合にも択一的に適用されて,重複して(つまり加算して)適用されることはありません。

2 車両一般の「著しい過失」「重過失」とは何ですか。  (クリックすると回答)


「著しい過失」
(1)脇見運転等の著しい前方不注視(道交法70条)
(2)著しいハンドル・ブレーキの操作不適切(道交法70条)
(3)携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり,画像を注視しながら運転すること(道交法71条5号の5)
(4)おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(但し高速道路を除く。)
(5)酒気帯び運転


「重過失」
(1)酒酔い運転
(2)居眠り運転
(3)無免許運転
(4)おおむね時速30㎞以上の速度違反(但し,高速道路を除く。)
(5)過労,病気及び薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある場合(道交法66条)をいいます。

なお,酒酔い運転とは,「酒気を帯びた上,酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)で車両等を運転すること」をいいます。

3 単車特有の「著しい過失」「重過失」とは何ですか。  (クリックすると回答)


ヘルメットの不着用が「著しい過失」です。
但し,高速道路における不着用は「著しい過失」ではなく「重過失」とされます。

4 自転車特有の「著しい過失」「重過失」とは何ですか。  (クリックすると回答)


「著しい過失」
(1)2人乗り(道交法55条等,但し,場合によれば都道府県によっては幼児用座席の使用が許されていることがあります。)
(2)無灯火(道交法52条)
(3)傘を差すなどした片手運転(道交法70条)
(4)右側運転(道交法17条)
なお,すべての右側運転ではなく,他方から見て左方から自転車が交差点に進入した場合にのみ「著しい過失」としています。
それは,他方から見て左方から自転車が右側運転で交差点に進入した場合には,衝突回避を困難とするからです。
なお,平成25年からは,自転車による右側の路側帯通行も,この「右側通行」に含まれます。


「重過失」 
「ピスト」等の制動装置不良(道交法63条の9第1項)です。
「ピスト」とは,本来は競技用自転車であり,固定ギアのために後に走行することができ,そのためにブレーキがいらないとしています。
それをまねて,ブレーキを自分で外して改造している自転車も見られます。
そのために,「ピスト」は本来的に道路を走行するには危険を伴うものなのです。したがって,制動装置不良は 「重過失」となります。

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5 車両一般の「著しい過失」である酒気帯び運転とは何ですか。(クリックすると回答)


(1)酒気を帯びて車両等を運転することであり,酒酔い運転を除きます。
(2)罰則を受けたかどうかは問いません。
(3)「酒気を帯びて」とは,通常人の血液中に常時保有されている程度以上にアルコールを保有して車両を運転することをいいます。
その基準となる程度(政令数値)は,「血液1ミリリットルにつき0.3mg又は呼気1リットルにつき0.15mg」です(平成19年改正)

6 自転車の明らかな高速度進入は「重過失」ですか。 (クリックすると回答)


例えば,坂道で速度が上がっているような場合を想定して,自転車特有の「重過失」と従来はしておりました。
しかし,原動機付自転車の制限速度である時速30㎞を超える速度で走行していた場合には,自転車特有の「重過失」とするのではなく,むしろ,四輪車・単車として扱って,その過失相殺率を適用するという方向になっています。

7 事故と直接因果関係がない無免許運転等の違法行為はどのように過失で評価されますか。 (クリックすると回答)


以前は当然に修正要素として著しい過失あるいは重過失となるとされていました。
しかし,現在は,事故と相当因果関係がある場合に考慮すると発想が転換されています。

もっとも,多くの事故態様において違法行為と事故との相当因果関係が推定されると考えられます。

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