Q.アキレス腱断裂とは,どのようなものですか。後遺障害(後遺症)となりますか。
アキレス腱断裂の原因として急激な足関節の底屈(足裏を曲げる動作)によって生じます。
治療が適切に行われたならば,後遺障害に該当することはまずないとされています。
しかし,足関節の可動域制限が残る例もあります。
1 アキレス腱断裂とは,どのようなものですか。 (クリックすると回答)
アキレス腱とは,腓腹筋とヒラメ筋遠位の丈夫な腱で踵骨に付着しています。
アキレス腱断裂の原因として急激な足関節の底屈(足裏を曲げる動作)によって生じます。
うつぶせで寝て膝を90°に曲げた場合に,健側は底屈位を示して足指の先が水平よりも上がっている(尖足位)を示すのに対して患側が中間位(そのまま水平)である場合には,断裂が疑われます。
あるいは,トンプソンテスト(Thommpson,下腿三頭筋把握テスト)によります。
このテストは,下腿三頭筋をつかんで反射的に足部が底屈すれば正常,断裂していれば動かないので,その場合には陽性となります。
保存的治療が主で,6週間のギプス固定後に足底装具を使用していきます。
早期の回復を望む,例えばスポーツ選手のような場合には観血的治療として腱縫合術が行われます。
2 後遺障害(後遺症)はどうなりますか。 (クリックすると回答)
治療が適切に行われたならば,後遺障害に該当することはまずないとされています。
しかし,足関節の可動域制限が残る可能性もあります。
3 アキレス腱断裂を認めて後遺障害10級に該当する足関節の著しい機能障害を認めた判決です。 (クリックすると回答)
京都地裁 平成17年1月27日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1599号
【事案の概要】
被害者(当時,41歳女子主婦)は,平成12年12月10日,歩行中に,加害者が運搬する台車に右足後部から衝突されました。
被害者は,アキレス腱部分断裂,足関節拘縮,アキレス腱腱膜炎の傷害を負い,平成12年12月12日から平成14年12月14日まで通院治療を受け,同日症状が固定しました。
【判決の趣旨】
(ア)自覚症状として,右足関節後面の疼痛(杖歩行を要す),階段昇降困難,易転倒性,右下腿腫脹があり,
(イ)他覚所見として,平成13年12月15日撮影のMRI上,右アキレス腱の明らかな延長を認め,これは下腿三頭筋の短縮によると認められ,また右アキレス腱近位部に瘢痕形成を認めることから,右アキレス腱に陳旧性断裂が存在し,顕著な圧痛もあるとされ,
(ウ)右足関節の可動域測定の結果,背屈が,他動及び自動で右0度,左15度,底屈が,他動で右25度,左45度,自動で右15度,左45度であり,
以上によれば,被害者は,本件事故によりアキレス腱部分断裂を受傷したと認めるのが相当である。
そして,被害者の症状は,後遺障害として等級表10級11号に該当する右足関節の著しい機能障害,等級表12級12号に該当する右足関節の疼痛が残ったと認めるのが相当である。
【コメント】
比較的予後がよいとされているアキレス腱断裂ですが,本件は,肥満症などもあって足関節の機能障害及び神経症状(疼痛)が残存した例です。
アキレス腱断裂そのものの存在が争点となりましたが,本件は自覚症状に加えて,事故から約1年後のMRI画像上の陳旧性断裂の存在が大きな決め手となりました。