Q.事業所得者(個人事業者)が,休業損害・逸失利益の基礎収入として請求できる固定経費としては,どのようなものがありますか。

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A.

事業所得者(個人事業者)が,休業損害として請求できるのは,現実の収入減があった場合とされています。
通常は,事故前年度の確定申告額を前提に基礎収入が算定されます。
一般に,事業所得者の基礎収入に関しては,事故前の申告所得額に,いわゆる固定経費を支出していれば,これを加算するというのが裁判所の基本的な考え方です。

1 一旦,休業していても事業再開可能性がある場合には固定経費を加えることができるでしょうか。(クリックすると回答)


個人事業者(事業所得者)の休業損害及び逸失利益の基礎収入としては,申告所得額を原則としますが,休業中の固定費(家賃,従業員給料など)の支出は,事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは損害として認められます。

しかし,休業が長期化していけば,廃業となる可能性があります。
特に,結果的には廃業してしまった場合には,結局は休止と言っても廃業するつもりではないのかと疑われることにもなりかねません。


そのような場合には,事業再開の可能性があった期間は固定費を加えて基礎収入とし,それがなくなった廃止届後は申告額を基礎収入としてます(大阪地判平成9年7月29日,交民集30巻4号1068頁)。
礎収入とし,それがなくなった廃止届後は申告額を基礎収入としているのです。

2 固定経費が年ごとにばらつきがある場合にはどうするのでしょうか。(クリックすると回答)


固定経費が,ばらつきがあるのは,業種によりあるいは景気の変動により,大いにあり得ることです。
事故前年および事故前々年に比べて事故年の所得が多く,3年間のばらつきがあり,固定経費もばらつきはある場合には,所得も経費も3年間の平均で算定するというやり方をする判決があります(東京地判平成21年10月27日,自保ジャーナル・第1823号)。

確かに景気の変動もある上に,先行投資としての意味合いもあったものと思われます。

3 接待交通費については,どの範囲まで認められますか。(クリックすると回答)


まさしく,業種によると思われます。
保険外交員ですが,
接待交際費①冠婚葬祭費・慶弔費・お見舞い金②お歳暮・中元の贈り物および③飲食代の一部を認めている例があります(東京地判平成23年1月26日,自保ジャーナル・第1850号)。
接待交際費が一般的には,いわゆる変動経費である特徴から収入との関連性も検討しております。保険外交員という職種の特殊性を考慮しているものとも言えると思われます。

個人事業者(事業所得者)すべてについて一般化することはできるかは今後の検討課題と言えます。
しかし,営業活動上,ルーティンとなっているようなものに関連した接待交通費については,他の業種においても認められる可能性はあると解釈できます。

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