Q.治療費の一括払いとは何ですか。---交通事故賠償は,むさしの森法律事務所

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A.

加害者側の損害保険会社(共済)による治療費支払いの方法ですが,一種のサービスにすぎず,不安定であり,またデメリットもあることを理解すべきです。

1 治療費の一括払いとは
人身事故における賠償責任保険は,強制保険である自賠責保険を基礎として,その上に上乗せ分としての任意保険(自動車保険の対人賠償保険)が乗っている2重構造となっています。
自賠責保険と任意保険とは別の保険であるために,1つの事故でも両方に請求する場合にはそれぞれの取り扱い損害保険会社(共済)に請求しなければならず,手続きがとても煩雑でした。
そこで,それを改善するために1973(昭和48)年8月から自賠責保険と任意保険との「一括払い」制度が導入されました。
これは,任意保険を取り扱っている損害保険会社(共済)が,任意保険金を支払う際に自賠責保険金の支払相当額を立て替えて支払う制度です。任意保険を取り扱っている損害保険会社(共済)は,後日自賠責保険を扱っている損害保険会社(共済)に対して立て替え払いした分を請求して回収をします(求償)。
結果として,自動車保険の請求手続きは任意保険への請求手続きに一本化されて極めて簡略化されました。
事故当初の治療費の支払いの場面において,従来の2重構造が最も煩わしさが際立っていましたが,医療機関は任意保険会社の「一括払い」として治療費を請求して受け取ればよくなり,現在ではすっかり制度として定着しています。

2 一括払いのデメリット
治療費に関して,任意保険がある損害保険会社(共済)が医療機関に対して一括払いをする場合には電話一本ですみます。
この一括払いをするという申し入れによって,損害保険会社(共済)と医療機関との間に医療費に関しての支払契約が成立したわけではありません。
この点は,任意保険がある損害保険会社(共済)の医療機関に対する一種のサービスにすぎず法的な権利義務関係が成立するものではないというのが,裁判所をはじめとした一般的な法的見解となっています。

その点からデメリットとして
(1)まず任意保険がある損害保険会社(共済)は医療機関に対して,いつでも一括払いをやめることができる。
つまり,キャスティングボートは損害保険会社(共済)に握られているのです。一括払いをやめられたとしても,医療機関もそして被害者=患者であるあなたは,文句を言えても,それは法的な権利の主張とはならないのです。

(2)その上で,一括払いをしている場合に,診断書・診療報酬明細書について医療機関は作成が義務づけられており,その中の情報は損害保険会社(共済)に筒抜けです。
しかも,同意書を被害者=患者であるあなたが損害保険会社(共済)に差し入れている場合には,それ以上の症状に関する情報が医療機関から提供されています。

3 一括払いを受けないと言う選択
便利だけども,デメリットがある一括払いについては,それによらずに治療する方法もあり得ます。一括払いを逆に医療機関と足並みをそろえて拒否をするのです。
もちろん,医療機関の理解と,被害者=患者であるあなたの冷静さが必要です。
つまり,自由診療にするか,健康保険を使用するかは,医療機関とよく相談するとして,一旦は立て替え払いをして自賠責被害者請求をし,さらにはそれを超えた分については,裁判などの法的手続きを視野に入れながら任意保険会社に後日請求をしていくのです。

一括払いを受け入れなければ,そもそもいつ一括払いを打ち切られるのかという心配もいらなくなるのです。
しかし,この点は,すべての事案と被害者に該当するものではなく,一時的な経済的負担及びその後の回収のリスクもありますから,十分に相談をして納得の上で行うべき選択肢です。

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