Q.胸郭出口症候群の疾患概念の変遷と,検査方法について教えて下さい。

[放散痛,画像所見,神経根,神経症状,肋骨,胸郭出口症候群,腕神経叢]

A.

胸郭出口症候群の疾患概念は,変遷しており,現在では広く神経障害としてとらえるものが一般的なようです。
検査方法としては,
(1)Morley test モーレイテスト
(2)上肢下方牽引テスト
(3)3分間運動負荷(挙上)テスト(ルーステストRoos test)

1 胸郭出口症候群とは (クリックすると回答)

胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome TOS)とは頚部から肩甲帯,上肢のしびれ,疼痛などの様々な症状を呈する疾患です。

2 TOSの疾患概念について (クリックすると回答)

TOSの疾患概念は変遷していると言われています。
(1)第1期
1956年にPeetによりTOSが様々な病態を持つ症候群を総括するものとして提唱されましたが,それは胸郭出口の神経・血管圧迫症候群でした。診断方法としては脈管系のAdson,Wrightテストが重視されて,画像所見としては鎖骨下動脈造影が行われました。

(2)第2期
1980年になると,TOSのほとんどは腕神経叢(注:神経が絡み合った茂みのようなもの)の障害が原因であり,血管障害はわずかであるというように変化してきたと言われています。
つまり,腕神経叢の圧迫ないし刺激が原因であるというのです。
従って,TOSの診断には,第1期で行われていた鎖骨下動脈の圧迫を評価するテストは役に立たないとされました。

(3)第3期
現時点では,神経障害ということで広くTOSを捉えるという考え方が有力と言えます。
従来は,腕神経叢あるいは鎖骨下動脈が第1肋骨,頚肋,鎖骨,斜角筋三角部等で圧迫されるとして,第1肋骨切除でその緊張が緩み症状が改善されると考えていたのが,それでも改善しない例が数多く出てきているからです。
例えば①下垂肩症候群②肩甲背神経絞扼です。
この様に,従来の斜角筋三角部よりも近位の斜角筋群内でも神経根やその分枝が障害されると言うことで神経障害ということで広くTOSを捉えるという考え方に至っているのです。

【注】
①下垂肩症候群
これは,肩甲帯が下垂した体型により腕神経叢が持続的に牽引されるものでTOSの牽引障害型というものです。
②肩甲背神経絞扼
これは,第5頚神経から分岐した肩甲背神経が分岐部である肩甲間部で絞扼(注:神経が狭い部位で締め付けられるように圧迫されること)されて生じるものです。

3 病態と症状 (クリックすると回答)

TOSは①肋鎖間隙(第1肋骨と鎖骨の間)での腕神経叢の圧迫②斜角筋などの頚部筋組織内での神経叢の絞扼③腕神経叢の牽引と言う神経障害がと言う病態が単独もしくは複合して生じていると考えられていると言えます。

①肋鎖間隙(第1肋骨と鎖骨の間)での腕神経叢の圧迫
従来からTOSとされていた典型的でもあり古典的なものと言われています。
主に,上肢尺側にしびれや疼痛があり鎖骨下動脈の圧迫も加われば上肢の浮腫もあります。

②斜角筋などの頚部筋組織内での神経叢の絞扼
上肢全体や母指,示指,中指にかけてのしびれや疼痛などの上肢の橈側の神経症状や側頚部痛,頚部伸展制限等を訴える場合が多く,肩甲間部痛を伴うことがあります。
腕神経叢は第5頚神経根(C5)から第1胸神経根(T1)で構成されています(C5~8及びT1)。
頚椎から出てきたこれらの神経根は,主に前斜角筋と中斜角筋(注:いずれも頚部にある筋肉です。)で構成される筋群の中で腕神経叢を構成して第1肋骨まで下行していきます。前斜角筋と中斜角筋は実際には一塊の筋群であるために,その中を走行している腕神経叢が筋肉のこわばりで絞扼したり癒着したりして症状が出ます。

③腕神経叢の牽引
体型的に肩甲帯が下垂していると常時腕神経叢は牽引された状態となっており,外傷を契機に発症します。
上肢下方牽引テストで疼痛が誘発されると疑われ,腕神経叢造影では肩関節を上げた状態でも肋鎖間隙での腕神経叢の圧迫所見はほとんど認められず,上肢の下方牽引で腕神経叢が直線上に緊張することで診断されます。

4 TOSに特有な診察方法はどのようなものですか。  (クリックすると回答)

特に次の3つが重要とされています。
(1)Morley test モーレイテスト
(2)上肢下方牽引テスト
(3)3分間運動負荷(挙上)テスト(ルーステストRoos test)

(1)Morley test モーレイテスト
検者の左手で被験者の手関節部の橈骨動脈を触れ,検者の右手で鎖骨上窩を圧迫する。内側から少しずつずらして圧迫していくと,鎖骨下動脈を圧迫したところで橈骨動脈の脈拍を蝕知できなくなる。
それによって鎖骨下動脈の位置が確認できる。腕神経叢はこの動脈に隣接し,その外側を併走しているので,そこを圧迫する。
圧痛だけではなく上肢や肩甲部への放散痛を認めると陽性である。

(2)上肢下方牽引テスト
検者の右手で腕神経叢を蝕知しながら,左手で被験者の上肢を下方に牽引する。牽引により索状の腕神経叢が突っ張る所見と神経症状の有無を見るものである。 その所見があれば陽性である。

(3)3分間運動負荷(挙上)テスト(ルーステストRoos test)
肩関節90度外転,肘90度屈曲,前腕回内位でゆっくりとこぶしを握ったり開いたりのグーパーの運動を3分間くり返して神経症状の出現を見るものである。
正常では苦痛を感じないが,症状が悪化してテスト中断を余儀なくされると陽性である。

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