Q.低髄液圧症候群の診断基準はどうなっていますか。

[めまい,ブラッドパッチ療法,低髄液圧症候群,日本神経外傷学会,画像所見,硬膜,起立性頭痛,頭痛]

A.

低髄液圧症候群の診断基準として明確な決め手となるものがないことが最大の問題点です。画像所見が得られることは極めて少ないとされています。
ガドリニウム造影剤による頭部MRIによる所見も完全とは言えないとされています。
国際頭痛学会による国際頭痛分類(2004年)の診断基準でも該当しない低髄液圧症候群の患者が現れており,その後に新たな基準が様々な形で提唱されてきています。

しかし,現状としては,損害賠償が認められる後遺障害認定には困難が伴うと言えます。

1 モクリMokri教授による4基準とは何ですか。 (クリックすると回答)

まず3兆候として
①起立性頭痛
②髄液圧の低下
③ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果
を挙げて,3兆候すべてを充たすものと,2兆候しか充たさないものに分類しました。
つまり,
(1)起立性頭痛+髄液圧の低下+ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果
(2)起立性頭痛+髄液圧の低下
(3)起立性頭痛+ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果
(4)髄液圧の低下+ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果
の4種類があるというのです。これが広く受け入れられるようになってきました。

2 「脳脊髄液減少症研究会」による「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」とは (クリックすると回答)

脳脊髄液減少症とは,「脳脊髄腔から脳脊髄液が持続的ないし断続的に漏出することによって脳脊髄液が減少し,頭痛,頸部痛,めまい,耳鳴り,視機能障害,倦怠などさまざまな症状を呈する疾患である」としています。

診断基準としては,RI脳槽・脊髄腔シンチグラムが最も信頼性の高い画像診断法としており,以下の1項目以上を認めれば髄液漏出としています。RI=ラジオアイソトープ

①早期膀胱内RI集積
RI注入3時間以内に頭蓋円蓋部までRIが認められず,膀胱内RIが描出される。
②脳脊髄液漏出像
くも膜下腔内にRIが描出される。
③RIクリアランスの亢進
脳脊髄液腔RI残存率が24時間以内に30%以下である。

3 日本神経外傷学会平成19年(2007年)中間報告とは (クリックすると回答)

前提基準
1. 起立性頭痛
国際頭痛分類の突発性低髄液圧症候群にならい,起立性頭痛とは
頭部全体および・または鈍い頭痛で,座位または立位をとると15分以内に増悪する頭痛である。
2. 体位による症状の変化
国際頭痛分類に示される頭痛以外の症状として挙げられる,
1.頸部強直,2.耳鳴り,3.聴力低下,4.光過敏,5.悪心をさす。

大基準
1. 造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強
2. 腰椎穿刺にて低髄液圧(60㎜水柱以下)の証明
3. 髄液漏出を示す画像所見=脊髄MRI,CT脊髄造影,RI脳槽造影のいずれかにより,髄液漏出部位が特定されたものを指す。
(前提基準1 項目)+(大基準1 項目以上)で低髄液圧症候群と診断する

外傷性と診断されるための条件
外傷後30日以内に発症し,外傷以外の原因が否定的

4 現状としてはどう考えるべきですか。  (クリックすると回答)

診断基準が確立していないことが最大の問題点であると指摘しましたが,まさしくその通りです。
例えば,「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」によればむち打ち症特有の頸部痛についてもガイドラインに沿った画像診断が得られれば,脳脊髄液減少症と確定診断されることになります。
そして,基準とする画像診断は比較的ハードルが低いとも言われています。他方で,日本神経外傷学会平成19年(2007年)中間報告では前提基準の病態は厳格であり,大基準で言う画像が得られない症例はかなりあるように思われハードルが高すぎるという感もあります。

さて,ブラッドパッチ療法については,診断基準の違いはあっても有効性が認められる症例が多くあることは一致していると思われます。
ただし,危険性もあること,症状が改善されないどころか悪化する場合もあること,そして何よりも健康保険がききません。
交通事故に関しては,ブラッドパッチ療法を損保会社(共済)が認められるかどうかが治療途中で争点となることが多くあります。
その場合に脳脊髄液減少症であるかの対立がかつて激しく行われたことがありましたが,現在では,その点はおいてブラッドパッチ療法については全面的とまでは行かなくとも,ある程度は認める事例が多くなっていると思われます。
ただし,その状況の変化があり得るかもしれませんが。

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