難聴と事故との因果関係を受診が2週間経った場合にも認めた判決です。

[受診の遅れ,後から症状悪化,後遺障害,,難聴]

 

本件は,受診時期の遅れから,事故と難聴との因果関係が争われたものです。
受傷から2週間というものでしたが,その程度の遅れならば,受傷による原因が認められることを前提に因果関係も認められると言えます。

札幌地裁  平成3年5月31日判決
平成2年(ワ)第5007号
<出典> 自保ジャーナル・判例レポート第98号-No,6

【事案の概要】(クリックすると回答)

被害者は,昭和62年10月23日乗用車を運転中,貨物車に右側から衝突され,右頭部を打撲し,反動で脳の左半球に障害を起こし,17回の検査で平均聴力値が10ないし13デシベル右耳の方が高い結果が出ていること等から,
両感音難聴と本件事故との相当因果関係が認められ,難聴の程度は後遺障害等級10級4号に相当するとされました。

【判決の趣旨】(クリックすると回答)


頭部外傷による難聴,耳鳴りのうち70ないし80パーセントを占め,側頭骨の骨折が認められないにもかかわらず中等度から高度の感音難聴を呈するものであり,
内耳振盪症による難聴は受傷直後かあるいは受傷後1週間以内に発現することが認められる。
両感音難聴,耳鳴り発生の時期について
被害者に耳鳴り,両感音難聴の症状が現れたのは,事故後2週間以上経ってからではないかとの疑問が生じないわけではない。
しかし一般的に患者は外傷の治療をしてから耳鼻科に受診することが多く,難聴があってもその治療のために病院に行くのが遅れることが多々あることが認められる。
また,被害者に本件事故直後から両感音難聴が出現していた旨の被害者の供述は不自然ではなく信用できる。



【コメント】(クリックすると回答)

難聴による聴力障害が交通時の外傷によるものであるかについて,つまり因果関係は,外傷が聴力に影響するものであるかどうかが問題となります。
本件では,頭部打撲による内耳振盪症に原因があると認定されました。
しかし問題となったのは,難聴に対する初診の遅れであり,そのことが,果たして症状が出現していたのか,あるいは出現していたとしても既往症によるもの(事故前から聞こえが悪かったのではないかと言う疑問)が出ることになってしまいました。
> 裁判所は,「内耳振盪症による難聴は受傷直後かあるいは受傷後1週間以内に発現することが認められる。」との一般論から「被害者に耳鳴り,両感音難聴の症状が現れたのは,事故後2週間以上経ってからではないかとの疑問が生じないわけではない。」との疑問点を指摘しました。しかし,「一般的に患者は外傷の治療をしてから耳鼻科に受診することが多く,難聴があってもその治療のために病院に行くのが遅れることが多々あることが認められる。」と本件では頭部打撲に加えて頸椎捻挫及び右肩挫傷後拘縮の外傷があったことから,その遅れについても許容の範囲内としました。

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