脊柱管狭窄を理由とする素因減額を否定した3判決です。

[ヘルニア,後遺障害,椎間板,素因減額,素因減額否定,脊柱管狭窄]

脊柱管狭窄を理由とする素因減額を否定した判決例です。

(1)事故前から脊柱管狭窄の症状を有していたとは認められない,
(2)事故の程度(加えられた外力)が大きい,
(3)通常の加齢による骨の変性・個体差の範囲を超えない,
と言うことが理由となっています。(但し,この全てを満たす必要はありません。)

1 事故前から脊柱管狭窄の症状を有していたとは認められない   (クリックすると回答)


大阪地裁 平成13年6月28日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1431号

原告に脊柱管狭窄が認められたのは本件事故直後のことであり,原告が本件事故前から脊柱管狭窄症の症状を有していたことを認めるに足りる証拠はない

また,前記認定のとおり,本件事故は,原告が自転車を運転中,時速約50㌔㍍で走行してきた被告車両とほぼ正面から衝突し,衝突地点から約20㍍離れた路上に転倒するという,それ自体相当激しい衝撃を人体に及ぼすことが予想されるものであった


2 事故の程度が大きい  (クリックすると回答)


京都地裁 平成14年11月7日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1484号

原告の骨性脊柱管の直径は実測約12.5㍉㍍であって,日本人の平均値よりも狭く,骨性脊柱管狭窄と評価される程度に至っており,平均的な日本人と比較すると,脊髄への圧迫を生じやすく,かつ,その程度も高度になりやすい状態であったところ,その原告の骨性脊柱管狭窄が疾患に当たるものであると認めるに足りる証拠はない

本件事故による原告の受傷の重篤さあるいは本件事故による外力の大きさにかんがみると,仮に原告の骨性脊柱管の直径が平均人と同程度のものであったとしても,原告に頸髄不全麻痺の後遺障害が残存した可能性は大きかったものとみるのが相当である。

3 通常の加齢による骨の変性・個体差の範囲を超えない  (クリックすると回答)


①東京地裁 平成17年1月17日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1601号

原告には既存障害として頸部脊椎症や頸部椎間板症が存在し,その影響は20ないし30%であるとの記載があり,いわゆる成長性脊柱管狭窄(無症状)があったとの見解もある。
しかし,その度合いが,通常の加齢による骨の変性・個体差の範囲を超えるものであることを認めるに足りる証拠はないし,それがどの程度頸髄損傷の発症及び損害の拡大に寄与したかは不明というほかない。
本件において,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するとはいえない。


②名古屋地裁 平成18年12月15日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1712号

脊柱管狭窄状況は明瞭で脊髄の変形も認められているので,決して軽微なものではない。
しかし,いつ発症してもおかしくないほど高度なものではない。
大きな外傷さえなければ無症状のまま経過した可能性も十分に考えられる状況といえるので,中程度の脊柱管狭窄状況があったと判断できる。

上記のような骨変成は,加齢性変化による体質的素因であって,病的素因というべきものではなく,しかも,原告の上記骨変性が加齢性変化についての個人差の幅を超えて通常生じ得ないほどのものであるということはできない。

交通事故における賠償や過失判例をご覧いただき、さらなる疑問にも弁護士として明確にお応えいたします。お気軽にご相談ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る