Q.外傷性てんかんの後遺障害(後遺症)等級は,どのようになっていますか。

[てんかん,外傷性てんかん,後遺障害,棘波,症候性てんかん,発作,脳波,高次脳機能障害,12級,7級,9級]

A.

器質的疾患によるてんかんを,症候性てんかんと言います。
そして,症候性てんかんの中で脳挫傷等の外傷性脳損傷によるものを特に外傷性てんかんと言います。
外傷性てんかんは後遺障害5級,7級,9級,12級となる可能性があります。
後遺障害となると,等級に応じた労働能力喪失での逸失利益及び慰謝料が認められることになります。

1 てんかん及びてんかん発作とは (クリックすると回答)

てんかんは反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害です。
てんかん発作とは,脳における過剰または同期性の異常なニューロン活動による一過性の徴候または症状です。
したがって,てんかんとは,てんかん発作を引き起こす持続性素因と,それによる神経生物学的,認知的,心理学的,社会的な帰結を特徴とする脳の障害です。(脳神経外科p2701 金芳堂)

2 てんかんの診断基準とは (クリックすると回答)

2014年ILAE(国際抗てんかん連盟)は,「てんかん」は,以下の3つのいずれかの状態により定義付けられる脳の疾患であると提案しています。https://www.ilae.org/translated-content/japanese

(1)24時間以上の間隔で2回以上の非誘発性(または反射性)発作が生じる。
(2)1回の非誘発性(または反射性)発作が生じ,その後10年間の発作再発率が2回の非誘発性の発作後の一般的な再発リスク(60%以上)と同程度である。
(3)てんかん症候群と診断されている。

現在では,このように1回でもてんかん発作が生じていれば診断基準に該当することになります。
その点で,潜在的なリスク要因を抱える患者の救済の基準としては優れたものと言えます。

しかし,外傷性てんかんと言えるためには,つまり交通事故との因果関係が認められるためには,依然としてWalkerの次の6項目への該当性が必要となると考えられます。
①発作はまさしくてんかん発作である
②受傷前にてんかん発作はなかった
③外傷は脳損傷を起こすのに十分な程度の強さであった
④てんかん発作の初発が外傷が余り経過していない時期に起こった(閉鎖性で2年,開放性で10年,2年以内に80%以上が発作)
⑤ほかにてんかん発作を起こすような脳や全身疾患を有さない
⑥てんかんの発作型,脳波所見が脳損傷部位と一致している

3 脳波所見の位置づけは (クリックすると回答)

脳波所見は,脳損傷部位との一致を判断するための補助的基準です。
脳波所見はてんかんの診断基準として不可欠とされていますが,脳波所見があるからといっても,てんかん発作を起こす,てんかんの状態にあるとは言えないとされています。
逆に,脳波所見がないからと言ってもてんかんではないとは言い切れません。

4 後遺障害の等級は (クリックすると回答)

平成15年(2003年)に改正されて以下のとおりとなっています。

5級2号:1ヶ月に1回以上の発作があり,かつ,その発作が意識障害の有無を問わず転倒する発作又は意識障害を呈し,状況にそぐわない行為を示す発作(「転倒する発作等」)であるもの

7級4号:転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるものまたは転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの

9級10号:数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの

12級13号:発作の発現はないが,脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの

5 5級を超える後遺障害とは (クリックすると回答)

平成15年(2003年)に改正されるまでは,てんかんで2級,3級という等級がありましたが,今回の改正で廃止されました。
これは,脳損傷による高次脳機能障害がある状態でてんかん発作を伴うことがあるために,てんかん独自で2級,3級というものが廃止されたのです。
そこで,1ヶ月に2回以上の転倒する発作等がある場合には,高次脳機能障害による等級認定によるということになるという構造になっています。

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