Q.一般道路において駐停車中の車両に追突してしまった場合の過失相殺(過失割合)は,どうなりますか。

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A.

別冊判例タイムスによる認定基準には掲載されておりませんが,2002(平成14)年版損害賠償算定基準(いわゆる赤い本)掲載の裁判官講演において示されたものが,基準となっていると考えられます。

1 その場合の過失相殺率(過失割合)基準は,そもそもありますか (クリックすると回答)

弁護士,さらには,裁判官が認定基準として用いるものには,東京地裁民事交通研究会編別冊判例タイムス16号によるものがあります。
しかし,これには,高速道路上におけるものが掲載されているものの,一般道路上におけるものは掲載がされていません。
この点について,「過失相殺基準表に取り入れることのデメリットがメリットを上回るので,適切でないと判断して基準を設けなかった」と裏話が明かされております(「新しい交通賠償論の胎動」東京三弁護士会交通事故処理委員会編 ぎょうせい p5)。

ところが,情勢の変化もあり,2002(平成14)年版損害賠償算定基準(いわゆる赤い本)掲載の片岡武東京地裁民事交通部裁判官(当時)が示した基準に従って東京地裁は運用するとされております(「新しい交通賠償論の胎動」p6)。
従って,片岡武裁判官が示した基準(上記赤い本p309)が,一般道路上での駐車中の車両に対する追突事故の過失相殺率(過失割合)のスタンダードとして現在まで運用されていると推測されます。

2 同裁判官が示した基準の基本的な考え方は (クリックすると回答)

前提として,一般道路上であるので,追突と被追突の関係にあると考えています。従って,被追突車両(駐車車両)には過失はなく追突車両の前方不注視や車間距離保持等の一方的な過失によるものであるとします。
しかし,駐車車両は障害物としての面もあるため,視認不良,駐車の態様等の具体的な状況に応じて修正要素として考えるというものです。

3 具体的な基準は (クリックすると回答)

2で述べましたとおり,追突車100(%)に対して駐停車0です。
それについて,BあるいはAの具体的な状況に応じて修正をするという構造になっています。

基本           A 追突車100  :    B 駐停車0
修正要素
視認不良           -10~20
Bの違法駐停車       -10
Bの駐停車の態様      -10~20
Bの非常点滅灯等の不燈火-10
Bの著しい過失又は重過失-10~20
Bの退避不能         +20
Aの速度違反          +10~20
Aの著しい前方不注視     +10

4 若干の補足説明 (クリックすると回答)

(1)Bの駐停車の態様 
○カーブの途中,交差点の直近及び坂道等ではAからBの発見が容易ではない。 
○道路幅が狭いところや追越車線に駐停車した場合にはAの通行を妨害する。
(2)Bの著しい過失又は重過失 
○整備不良 
○自招事故 
○放置(注:なお,「放置」というのは具体的な状況によると思われます。単純に一定時間車両から離れていたことをもって「放置」とする趣旨ではないと考えられます。)
(3)Aの著しい前方不注視 
○前方不注視は基本割合として既に考慮しているが,著しい場合は別途事由
(注:具体的なものとしては例示されていませんが,携帯電話を使用していたりして,運転操作に集中していなかったような場合が考えられます。)

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