Q.外傷性てんかんとは何ですか。また,後遺障害はどうなりますか。さらに,死亡する場合もあるのでしょうか。

[てんかん,てんかん重積,側頭葉,前頭葉,外傷性てんかん,後頭葉,棘波,欠神,症候性てんかん,痙攣,脳波,遅発性]

A.

器質的疾患によるてんかんを,症候性てんかんと言います。
症候性てんかんの中で脳挫傷等の外傷性脳損傷によるものを特に外傷性てんかんと言います。
外傷性てんかんは後遺障害5級,7級,9級,12級となる可能性があります。
てんかんには一定の診断基準があり,さらに脳波所見が事故との因果関係で問題となります。
さらに,てんかん重積状態から死亡に至るおそれもあります。

なお,分かりにくい欠神という「てんかん」もあります。

続きを読む

1 てんかん及びてんかん発作とは  (クリックすると回答)


てんかんは反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害です。
てんかん発作とは,大脳のある部分の神経細胞が発作性に異常に過剰な活動を起こし,ある程度広範な領域の神経細胞を巻き込んで,一斉に興奮状態に入った場合に生ずるものです。
運動感覚,自律神経又は精神などの機能の一過性の異常状態とされています。

2 症候性てんかんと外傷性てんかんの関係は (クリックすると回答)


症候性てんかんの中でも,脳障害部を焦点として発生するものを特に外傷性てんかんといいます。
焦点としては,脳挫傷によって生じた瘢痕形成,大脳皮質と硬膜との癒着,脳内の異物,感染後の瘢痕形成がなりやすいとされています。
外傷性てんかん発症部位としては,前頭葉が最も多く側頭葉,後頭葉の順となります。

そして,焦点として発生することから,外傷後に直ちに発症するのではなく,一定期間を経過した後に発症するとされています(遅発性)。

すなわち,外傷後1週間を経過してから発作が出るものが本来の外傷性てんかんで,通常外傷後6ヶ月までに半数が,2年までに約80%が発症するとされています。
これは,すべて発症すると言うことではなく,外傷性てんかんの発症には,一定の危険因子および外傷性であるかの鑑別基準があります。

3 てんかんの診断基準とは (クリックすると回答)


外傷性てんかんとしての診断基準は次のようになっています(Walkerの6項目)。

①発作はまさしくてんかん発作である
②受傷前にてんかん発作はなかった
③外傷は脳損傷を起こすのに十分な程度の強さであった
④てんかん発作の初発が外傷が余り経過していない時期に起こった(閉鎖性で2年,開放性で10年,2年以内に80%以上が発作)
⑤ほかにてんかん発作を起こすような脳や全身疾患を有さない
⑥てんかんの発作型,脳波所見が脳損傷部位と一致している

4 脳波所見の位置づけはどうですか。  (クリックすると回答)


脳波所見は,脳損傷部位との一致を判断するための補助的基準です。

脳波所見の解釈を誤ると,脳波異常を伴う非てんかん患者と脳波異常を伴わないてんかん患者という二重の誤診の危険性があると言われています。
実際にも,約15%のてんかん患者は,反復検査によっても脳波異常を示さず,通常の脳波検査による異常の出現率は約50%程度に過ぎないとされています。

しかも約10%の非てんかん患者に,てんかん様の脳波異常が出現するとされています。
正確さを期するためには集中監視と深部脳波が考えられますが,患者への肉体的(いわゆる侵襲性が高いとされています。)経済的及び時間的負担が大きいために実現が難しいともされています。
(星和書店 久郷敏明著 てんかんの本 エプレプシー・ガイドp32)

脳波はてんかんの診断に最も重要な価値を持つ検査であるとされていますが,現状では,てんかん性の脳波異常の明確な診断基準は確立していないと言えそうです。
そのため,裁判例において脳波に異常所見がない場合であっても,事故との因果関係を認めたものがあります。

5 後遺障害等級はどうなりますか。  (クリックすると回答)


等級は,発作の有無・程度,就労への影響により格付けされています。

5級2号:
1ヶ月に1回以上の発作があり,かつ,その発作が意識障害の有無を問わず転倒する発作又は意識障害を呈し,状況にそぐわない行為を示す発作(「転倒する発作等」)であるもの

7級4号:
転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるものまたは転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの

9級10号:
数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの

12級13号:
発作の発現はないが,脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの

6 てんかんと死亡との因果関係はどうですか。 (クリックすると回答)


外傷性てんかん受傷後の「てんかん重積状態」となっている場合において,死亡と事故との因果関係を認めることは可能と考えられます。

(1)てんかん重積状態とは
てんかん発作は,通常は数分以内に終了しますが,例外的に長時間にわたって遷延ないし反復することがあり,これをてんかん(発作)重積状態と呼びます。

さらに厳密には,発作が遷延し30分以上連続して生じるか,あるいは個々の発作は通常の時間内に停止しても,意識が回復する前に次の発作が反復し,そのような状況が30分以上持続することを言います。

(2)てんかん重積状態と死亡との因果関係
 
重積状態となり発作によって死亡に至ると言うことから,死亡との因果関係は認められることが多いと思われます。
さらに,重積状態は脳損傷の重篤程度に関連するともされており,脳損傷が重度であれば重積による死亡リスクは高まる関係にあるとも言えます。

7 欠神とは何ですか。 (クリックすると回答)


欠神とは,(大きな)痙攣のないてんかんで小発作に属するものを言います。

欠神は,痙攣を主とする大発作に対して,軽い痙攣と短時間の意識消失を主とするものです。

急激に10秒から30秒くらいの意識消失を起こして発作時には,手にしていた物を落としたりするのですが,他人には気づかれにくいものです。

非定型欠神発作は,難治性のものとされています。

むち打ちや脱臼、脊髄損傷など、幅広い疑問にもお応えします。ご相談は埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご連絡ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る