Q.駐車場内の交通事故における過失割合は,どのように考えるべきですか。

[修正要素,児童,歩行者,著しい過失,過失割合,過失相殺,重過失,駐車,駐車場,駐車場内,高齢者]

A.

駐車場は,駐車を主たる目的としている場所という特殊性から,走行している四輪車に対して,前方注視義務や徐行義務が、より高度に要求されます。
駐車場内の交通事故は,四輪車同士と四輪車と歩行者の場合に分けることができます。
そして四輪車同士の事故は,
(1)通路の交差部分における出合い頭衝突
(2)通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故
(3)通路を進行する四輪車と駐車区画に進入しようとする四輪車との事故
に大別されます。
また,四輪車と歩行者の事故は,
(1)駐車区画内における事故
(2)通路上における事故
に大別されます。
各分類にしたがって別冊判例タイムズ38号 2014年版では,過失割合(過失相殺率)の基準を示しており,修正要素も合わせて示しています。
なお,基準とした衝突形態に適合しない場合においては,個別具体的に事実関係に基づいて過失割合(過失相殺率)を判断すべきです。
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なお詳細は続きをご覧ください。

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1 駐車場の特殊性と過失割合(過失相殺率)の関係について (クリックすると回答)

駐車場内の交通事故において,その通路が道路交通法が適用される「道路」に該当することを前提にする議論ではなくて,駐車を主たる目的としている駐車場の特殊性から考えるべきです
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p494)。

2 駐車場の特殊性とは何ですか。 (クリックすると回答)

駐車を主たる目的としていることから,駐車のために四輪車が後退,方向転換等の行動に出ることが多く(=通常の道路では考えにくい行動が多い),駐車している四輪車から歩行者が出てくることも多いため,走行している四輪車に対して,前方注視義務や徐行義務我より高度に要求されることです。いわば,駐車場内における運転慣行というべきものです。
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p494)

3 四輪車同士の事故についてはどう考えるのですか。 (クリックすると回答)

(1)通路の交差部分における出合い頭衝突通路の交差部分は,一般道路の「交差点」に一見すると似た形状をしています。通路を「道路」とは同じに考えないという運転慣行からは,道路交通法で言うような有線関係及び通行方法に関する義務は当てはまらないのです。つまり,等しく他の四輪車の通行を予見して安全を確認して他車との衝突を回避する義務があります。すなわち,原則は双方同等(5:5)であり,幅員の違いや運転方法等の事情について修正要素として考慮されるに過ぎないのです。(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p497~499)


(2)通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故

ア 基準として示されているものは,あくまでも「出合い頭衝突」の形態です。
駐車場内の事故態様は様々なものがあるので,具体的な事実関係に応じて個別に考えるべきであると言うことです。
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p500)

イ 結論から言えば,
駐車区画内から出ようとする車両により重い責任があるとされます。
具体的には,通路を進行する四輪車3に対して駐車区画内から出ようとする車両7を原則とします。(上記p501)
それは,駐車区画内から出ようとする車両は,動く前に停止の状態があり通路進行車両よりも容易に安全を確認して衝突を回避することができるからです。
なお,この原則の過失割合が双方車両が前進であろうと,後退であろうとも同様に適用されます。

ウ 上記の原則によらず個別に考えるべきとされる場合は以下です。
①通路進行車両が急制動(=急ブレーキ)をとっても停止できない距離に近づいた段階で駐車区画から退出車両が通路への進入を開始した場合
②通路進行車両が駐車区画退出車両が通路に進入することを認識して,それに十分な車間距離をとっていたにもかかわらず,退出車両が運転を誤って通路進行車両に衝突した場合
③駐車区画退出車両が,既に退出を完了して,通路の進行を開始した後に通路進行車両と衝突した場合

これらについて①②は,そもそも通路進行車両に過失があるかが問題となります。おそらく過失を否定されることが多いと思われます。 ③は,原則ではなく,通路進行車両同士の基準によるべきだと考えられます。

(3)通路を進行する四輪車と駐車区画に進入しようとする四輪車との事故

ア 通路を進行する四輪車と駐車区画に進入を開始した四輪車との衝突を想定しています。
それは,通路を進行する四輪車からは,いわゆるハザードランプ,ウィンカー等の点灯により駐車区画に進入を開始する車両の存在を予めある程度手前の位置で客観的に認識し得たことが前提となっているからです。
したがって,客観的に認識し得ないような場合においては,この原則によらないで個別具体的に考えるべきです。
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p502)

イ 結論から言えば,
通路進行車両には駐車区画進入開始車両よりも重い責任があると言うべきです。
具体的には,通路進行車両8に対して駐車区画進入開始車両2を原則とします。
それは,駐車場というのはそもそも駐車することを目的としており,駐車区画進入開始車両の動作は,その目的に沿ったものであって通路進行車両は,それを念頭に運転をしなければならないからです。
なお,この原則の過失割合が双方車両が前進であろうと,後退であろうとも同様に適用されます。

ウ なお,「(2)通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故」と同様に,上記の原則によらず個別に考えるべきとされる場合があります。
①通路進行車両が急制動(=急ブレーキ)をとっても停止できない距離に近づいた段階で駐車区画への進入を開始した場合
②通路進行車両が他の車両が駐車区画に進入することを認識して,それに十分な車間距離をとっていたにもかかわらず,その車両が運転を誤って通路進行車両に衝突した場合
③駐車進入開始車両が,既に進入を完了し後に通路進行車両と衝突した場合

これらについて①②は,そもそも通路進行車両に過失があるかが問題となります。おそらく過失を否定されることが多いと思われます。
③は,逆に通路進行車両の一方的な過失によることが多いと思われます。

4 歩行者と四輪車との事故はどのように考えるのですか。  (クリックすると回答)

(1)駐車区画内における事故駐車場内の駐車区画は,駐車する場所であると同時に,その利用者が乗車・降車をする場所でもあります。歩行者専用通路を備えている駐車場の数は現時点では,さほど多くはなく,通路は歩行者が往来をする場所でもあります。
したがって,四輪車としては常に歩行者の存在を念頭においていつでも停止できる体勢にいなければならないと言うことになります。
他方で,歩行者としても,駐車区画には駐車するための車両がやってくる場所であるという点に注意義務があります。
そこで,原則として歩行者1に対して四輪車9とされています。
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p505~506)

(2)通路上における事故駐車場内の通路は原則として駐車場を利用する四輪車のためのものでありますが,歩行者専用通路がない駐車場においては,歩行者のための通路でもあります。
したがって,原則として四輪車が重い責任を負い,歩行者1に対して四輪車9とされています。
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p507~508)

5 修正要素についてはどうでしょうか。  (クリックすると回答)

以下のものが修正要素とされています。

ア 歩行者用通路標示上
イ 狭路・明らかに広い通路,丁字直進
ウ 児童・高齢者,幼児・身体障がい者等
エ 徐行なし
オ 一時停止・通路方向標示等違反
カ 急な飛び出し
キ 隣接区画での乗降あり
ク 著しい過失・重過失

「キ 隣接区画での乗降あり」は,駐車場特有の修正要素と思います。
四輪車の運転者としては,隣接する駐車区画において乗車または降車しているものが事故の進入しようとする駐車区画を往来することを予見し,特に慎重に安全確認等をすべきであることから,歩行者の過失相殺率を減算(10%)することにしています。その結果,原則からの修正で歩行者の過失はないことになります。
(別冊判例タイムズ38号 2014年版 p494~496)

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