Q.後遺障害(後遺症)14級9号と認定される頚椎捻挫(むちうち),腰椎捻挫とはどのような場合でしょうか。むさしの森交通事故法律相談

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A.

基本的には初診時における受傷部位に常時痛が残存しており,その上で受傷との相当因果関係が認められる必要があります。
その相当因果関係は治療の一貫性,連続性などから判断されると考えられます。

1  自賠責保険基準と労災基準ではどうなっていますか(クリックすると回答)

自賠責保険基準では14級9号となっていますが「局部に神経症状を残すもの」となっていますが,
労災基準では「通常の労務に服することはできるが,受傷部位にはほとんど常時疼痛を残すもの」(14級の9)として疼痛が後遺障害認定の対象となることが明記されています
(労災補償障害認定必携p159 平成23年版)。

2  14級9号と認定されるための要件というものはありますか(クリックすると回答)

労災基準からは自賠責14級9号「局部に神経症状を残すもの」が「常時痛」を前提としていることが明らかです。
しかし,14級は12級と異なり他覚的所見がなく自覚症状のみで判断されるため受傷と残存症状である「常時痛」との相当因果関係がなければなりません。
この点について,自賠責14級9号「局部に神経症状を残すもの」とは「障害の存在が医学的に説明できるもの」という表現がされることがあります
(「後遺障害等級認定と裁判実務」 新日本法規p244」)。
だが,説明できるというのはどういうことなのか,今ひとつ分かりません。

整理すると,14級9号と認定されるための要件はあると言えます。
そして,その要件は抽象的には,
(1)受傷部位に常時痛が残存する
(2)受傷と(1)との間に相当因果関係が認められる
ということになります。
これらについて,以下でも少し詳しく御説明致します。

3  常時痛とは(クリックすると回答)

文字通り,安静時でも疼痛(痛み)があると言うことですが,労災基準では「受傷部位にはほとんど常時疼痛を残すもの」と「ほとんど」となっているので24時間まであることは要求されてはいないと考えられます。
おそらく,常時痛という考え方は,動作時痛(あるいは運動時痛とも言います)の場合を排除するためだと思われます。
つまり,普段は痛みはないが動作をすると痛くなるという場合には常時痛ではないことになります。
しかし,普段も痛みがあるところ,動作をすると強くなる(つまり増悪する)という場合は常時痛に含まれると考えます。
疼痛にしびれなどの感覚障害を伴う場合もあります。
だが,しびれは12級13号の該当の対象となるのが頚椎捻挫では基本であると考えます。
そして,12級13号に該当しない場合には,感覚障害は「その範囲が広いものに限り」とされていますから(労災補償障害認定必携p159 平成23年版),意味を持たないと思われます。

4  受傷との相当因果関係とは(クリックすると回答)

相当因果関係の前提として受傷と結果である「常時痛」の因果関係が必要です。
その上で,その因果関係の相当性が判断されるのです。
相当性について一言で言えば,受傷後に疼痛に向けられた医療機関の治療,接骨院(整骨院)の施術が一貫性,連続性をもって積極的に行われているかで判断されます。
なお,積極的というのは漫然と濃厚な治療ということではありません。

以上を整理すると,
(1)受傷と結果の因果関係
(2)治療の一貫性
(3)治療の連続性

もう少し詳しく御説明を致します。
(1)受傷と結果の因果関係
初診時の診断書について傷病名と後遺障害診断書の傷病名が一致していなければなりません。
この点で,頚椎捻挫つまり首の疼痛が出現したことが初診時の診断書になければ後遺障害診断書にいくら記載があっても因果関係で否定されてしまいます。
初診時に症状が出現していたにもかかわらず傷病名として記載がない場合には,その後の診断書に追加して頂く必要があります。
しかし,その時期・内容によっては因果関係で否定される可能性があります。
また,初診の遅れが1週間あった場合には自賠責保険の考え方では症状出現時期=受診時期となりますので,よほどの合理的な説明ができる場合でなければ因果関係で否定されてしまいます。

(2)治療の一貫性
初診時から症状固定時まで,受傷部位つまり頚椎捻挫による疼痛があり,それに対する治療が一貫してなされているかと言うことです。
途中で,疼痛以外の症状が出現することがあって,それに対する治療がされることがありますが,それがたびたび変化するようであれば「不定愁訴」として一貫性がないものとされます。
また,同じ疼痛でもその箇所がたびたび変化する場合も同じです。
さらに,頚部痛・頭痛等の頚椎捻挫による疼痛であっても「改善しつつある」と記載された後に,単に「増悪した」「また痛みがぶり返した」等との記載があるとします。
すると,一貫性に疑問が持たれ,治療継続の必要性自体にも疑問が持たれるおそれがあります。
そもそも「改善しつつある」という表現は,症状経過がその通りであれば正直な記載であり問題はありません。
しかし,それが常時疼痛が残存しているにもかかわらず治療中に繰り返し記載され続けていくと,自然治癒が期待できるために治療の必要性が疑われてしまいます。
その結果として,被害者に不利益が生じるおそれもあります。

(3)治療の連続性
この点では,治療の積極性の評価にかかわります。
後遺障害認定は事後的な書面を中心とする判断です。
当初の症状がひどくとも途中で1ヶ月のブランクがあったり,接骨院(整骨院)中心で整形外科医から投薬治療も受けていないと言うことになれば治療に疑問を持たれます。
あるいは,そこまで極端ではないとしても,接骨院(整骨院)に比較して接骨院の治療がほとんどない場合も同様です。
さらに,治療期間もこの連続性に関係します。
3,4ヶ月とか6ヶ月未満の治療期間の場合には治療の連続性が常時疼痛が残存するほどの程度ではなかったと評価されます。
症状が軽減して就労に差し支えなくなったり,あるいは症状がないにもかかわらず治療を伸ばしていくことは論外ですが,
自覚症状のみのものである故に6ヶ月以上の治療期間に一定の頻度で通院したという連続性の事実が必要です。
それにもかかわらず「不幸にして」常時疼痛が残存するものとして後遺障害の対象となるのです。

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