Q.正常な排尿機能の仕組みはどうですか。その障害とは,どのようなものですか。

[尿失禁,尿道,括約筋,排尿,排尿障害,脊髄損傷j,脳損傷,蓄尿,陰部神経,頻尿,骨盤神経]

A.


1 下部尿路の解剖的構造

(1)下部尿路の構造
膀胱と尿道から構成され,膀胱と尿道の境界を膀胱頚部と呼びます。
(2)膀胱
膀胱は,小骨盤腔前方にあって,頂部・体部・底部に分けられています。
なお,膀胱にはアセチルコリン及びαアドレナリンβアドレナリンの各受容体が豊富に分布しています。
(3)尿道
男性と女性で構造が異なります。
男性の尿道は近位部・遠位部に分けられますが,女性の尿道は全部が男性の近位尿道に当たります。
(4)筋組織
外尿道括約筋と内尿道括約筋があります。
外尿道括約筋は横紋筋からなっており,内尿道括約筋は平滑筋からなって交感神経受容体が豊富に存在します。

2 下部尿道の神経支配
(1)概要
脳幹排尿中枢→脊髄排尿中枢→骨盤神経・下腹神経・陰部神経→骨盤神経節→下部尿路(膀胱・内尿道括約筋・外尿道括約筋)と下行しています。

(2)各筋の神経支配
膀胱排尿筋=骨盤神経(副交感神経)による支配
外尿道括約筋=陰部神経による支配
内尿道括約筋=下腹神経による支配
なお,これらの節前ニューロンは上位にある脊髄排尿中枢にあります。

(3)尿意から排尿
通常の尿意は,膀胱全域で受容され,主に骨盤神経を介して伝えられます。
排尿が今にも始まるという切迫性の尿意は膀胱頚部や近位尿道の刺激で起こり,陰部神経を介して脊髄に伝達されると考えられています。

(4)脳幹排尿中枢
排尿機構を統合する部位が脳幹部に存在します。脳幹排尿中枢はさらに前頭葉や大脳規程核から支配されています。

3 正常な排尿機能
(1)蓄尿と排尿
蓄尿と排尿がいずれもうまくいって正常な排尿機能となります。それは蓄尿時には尿道が収縮し,排尿時には尿道が弛緩(ゆるむ)することがスムーズに行われていることです。

(2)蓄尿時の尿道
尿道が正常に収縮するためには
膀胱=弛緩良好
膀胱頚部(内尿道括約筋)=閉鎖良好
前立腺部尿道=閉鎖良好
外尿道括約筋=閉鎖良好

(3)排尿時の尿道
尿道が正常に弛緩するためには
膀胱=収縮良好
膀胱頚部(内尿道括約筋)・排尿筋内括約筋協調=開大良好
前立腺部尿道=開大良好
外尿道括約筋・排尿筋外尿道筋協調=開大良好

(4)通常の尿意から排尿までの時間
初発の尿意を感じて排尿するのではなく,最大の尿意を感じるまで通常は最低1時間は我慢ができるものと考えられています。

(5)排尿における正常状態
排尿しようとすれば膀胱内に尿がたまった感覚がないほどの少量でも排尿ができることを言い,通常は排尿中に特別な努力を必要としません。

4 排尿状態(蓄尿及び排出)の障害
(1)膀胱及び尿道の中枢性障害の結果,排出障害も蓄尿障害も出現します。
(2)脳疾患では蓄尿障害が出現します。
(3)脊髄疾患では排出障害が主に出現します。


5 蓄尿時の障害対応関係
膀胱=弛緩不良→排尿筋過反射 ●尿量切迫●尿失禁
尿管=逆流して膀胱へ戻る   ●残尿増加●頻尿
膀胱頚部=内尿道括約筋弛緩  ●尿意切迫
外尿道括約筋=括約筋無抑制弛緩●尿失禁

6 排尿時の障害対応関係
膀胱=肉柱膀胱→不完全排尿収縮 ●頻尿・尿失禁
尿管=膀胱尿管逆流・水腎・水尿管●尿路感染症●腎機能障害
膀胱頚部=膀胱頚部硬化症・排尿筋内括約筋協調不全●排尿困難
前立腺部尿道=尿道膀胱逆流・前立腺炎・前立腺肥大●排尿困難
外尿道括約筋=排尿筋外尿道筋協調不全●排尿困難

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