Q.PETとSPECTとは何ですか。そしてそれらは,高次脳機能障害認定にどう影響しますか。

[PET,SPECT,びまん性脳損傷,画像所見,脳損傷,高次脳機能障害]

A.


PET及びSPECTが脳機能低下の判断材料として有用であることは認めます。高次脳機能障害における画像所見としてそれらを補助資料として認定した判決(リンク)があることは価できます。

1 核医学検査
(1)はじめに
PETもSPECTもともに核医学検査と呼ばれるものに属しています。
(2)核医学検査とは
RI検査とも呼ばれていますが,γ(ガンマ)線を放出する放射性同位元素(ラジオアイソトープ,RI=radioisotope)で目印にした放射性医薬品を体内に投与して,目的となる臓器や病巣に放射されてくるγ線を体外からガンマカメラと呼ばれる高感度カメラによって映像化されます。ガンマカメラは別名シンチカメラとも呼ばれています。それは,カメラの中にγ線が当たることによって閃光(シンチレーション)する物質を使っているからです。
(3)シンチグラフィーとemission(放射型)CT
従来のシンチカメラ(ガンマカメラ)は検出面が一面だけの単検出器型カメラでこれによる二次元脳画像がシンチグラフィーです。
その後,X線CTが登場して,シンチカメラを回転させならが放射性同位元素(RI)分布の断層像を作成できるように技術開発されました。X線CTに対してemission(放射型)CTと呼ばれます。emission(放射型)CTによって,従来のシンチグラフィーはとってかわられてきています。
(4)PETとSPECT
PETとSPECTは,どちらもこのemission(放射型)CTに属しています。脳梗塞,脳腫瘍等の有効な検査方法とされています。

2 PET positron emission tomography 陽電子放射断層法 ポジトロンCT
(1)PETとは
ポジトロン(陽電子)を放出する陽電子放出核種(核種とは原子又は原子核の種類)から出された光子(消滅放射線)を画像化したものです。この陽電子放出核種は,医用サイクロトロンで作られたものを用います。
(2)PETの原理
ポジトロン(陽電子)は,陰電子(いわゆる電子)と結合して消滅しますが,その消滅する際に2本の光子(消滅放射線)を同時に180°方向に放出します。この放出される消滅放射線を同時計数法により検出して画像化するのです。脳内の放射性同位元素(RI,radioisotope放射性核種と同じ意味です)の位置と量を正確に知ることができ,脳深部からのデータも得やすいという利点があります。
(3)PETによる脳循環・代謝測定
脳血流量,脳酸素摂取率,脳酸素代謝率,脳血液量,脳グルコース代謝率の測定とイメージングが行えます。
(4)脳のエネルギー代謝
脳波,活発にエネルギー代謝が行われている臓器です。重量は成人体重の2%にすぎないのに,脳の酸素消費量は全酸素消費量の約20%を占めています。また,脳は他の組織のようにグルコース以外の物質を利用できないのにかかわらず,脳にはグルコースを備蓄する能力があることはありますが,極端に限られているのです。なお,グルコースとはブドウ糖であり,血中にあるグルコースがいわゆる血糖です。脳が正常な活動を維持していくためには,絶えずグルコースが供給されていなければならず,それは酸素と共に血液から供給されます。脳への血流が低下すると,脳は容易に非可逆的損傷に至ってしまいます。
この様に,脳への血液供給が低下すると,グルコースの枯渇と酸素供給の減少によって脳はエネルギー産出ができなくなり,すぐに非可逆的損傷になってしまいます
PETによる脳循環・代謝測定は,この様に脳内の血流循環と,それによるグルコース及び酸素供給が十分でエネルギー代謝に障害が生じていないかを調べることができるのです

3  SPECT
(1)SPECTとは single photon emission cmputed tomography シングルフォトンECT
体内に投与された放射性同位元素(RI radioisotope ラジオアイソトープ)を対軸の周囲から計測し,コンピュータを用いて体内放射能分布像を再構成する方法をECT emission cmputed tomographyと言います。SPECTとは,ECT の一種で通常のγ線放射線核種(単一光子放射)を用いて測定するものを言います。
(2)SPECTの原理
SPECTもPETもECTです。PETが,陽電子放射性核種を用いて,消滅する際に放出される消滅放射線を同時計数法により検出して画像化するのに対して,SPECTは,陽電子放射性核種ではなく通常のγ線放射線核種(単一光子放射)を用いるだけで,同時計数法による画像化の点では同じです。
(3)SPECTによる脳循環・代謝測定
SPECTによっても脳血流分布が求めることができ,脳循環・代謝測定が可能です。
PETが医用サイクロトロンを必要とするのに対して,それを不要とすることから簡便であるために脳血流量の測定によく用いられています。脳血流量の絶対値が求められるものと相対値のみが求められるものとがあります。

3 高次脳機能障害の判定に必要か                 
(1)CT等では異常所見がなくとも,血流低下を示すことがあり,高次脳機能障害の判定に有効な場合があります。
(2)しかし,脳の局所的な血流低下は,脳が器質的な変化をしていなくとも生じることがあり,それがSPECT等の検査結果に反映されることがあります。
(3)びまん性脳損傷については,血流や代謝の低下がSPECT等の検査結果に反映され脳全体の機能低下が客観的には示されたことになります。しかし,それが,どこの機能であるかの特定はもちろん,器質的損傷を示しているものであるかどうかの評価は分かれていると言えます。
(4)さらには,SPECT等の検査結果は,その時点での脳血流・代謝を示すものであり,一時的な異常所見だけでは,脳機能の低下を断定できないという見解も有力にあります。
(5)そして,そもそもSPECTや,さらにはPETによる検査は高額であり,それが行える医療機関及び画像診断方法も現時点では確立しているとは言えません。
4 結論
PET及びSPECTといった核医学検査が脳機能低下の判断材料として有用であることは認めます。高次脳機能障害における画像所見としてそれらを補助資料として認定した判決があることも評価できます。しかし,判決の流れとしては定着しているものとはいえません。今後の推移を見守りたいと思います。

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