Q.将来の介護費用について,常時介護と随時介護,また,職業付添人と近親者ではどのように違いがありますか。

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A.

将来の介護費用とは,後遺障害のために,被害者に治療が終了して症状固定となった後も,介護が必要な身体状況が残ったことにより生じるものです。

介護には,常時介護と随時介護があります。
そして,介護者には,職業付添人と近親者による介護する場合が考えられ,それぞれ金額の「相場」が形成されつつあります。

特に,職業付添人の将来の介護費用金額を決めるには様々な要素があります。

1 常時介護と随時介護はどのように違いますか。   (クリックすると回答)


常時介護が,文字通り日常生活全般にわたっての介護に対して,随時介護は日常生活の中で必要な範囲となります。
自賠責保険おいては,1級=常時介護,2級=随時介護,3級=介護不要,
とランク付けがなされています。

しかし,裁判実務では,後遺障害の等級だけではなく,具体的な内容・程度,さらには生活状況等を考慮して判断されていきます。

従って,自賠責保険における後遺障害等級のとおりにならないことも多くあります。

それでは,常時介護と随時介護では実際には何が違うのでしょうか。
常時介護においては,職業介護人(付添人)の利用が認められることが多いことから,1日あたりの金額も高くなります。

これに対して,随時介護では,近親者の介護を前提とすることもあり,常時介護に比べて低額な金額として算定されています。

このように,将来介護費用の金額は,場合により逸失利益よりも高額となります。
そのことから,訴訟に至る争いとなることが多くなります。

2 職業付添人が介護する場合の金額は,どのくらいになりますか。  (クリックすると回答)


(1)実務基準
赤い本2015年版上巻p21では,「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。」として「職業付添人は実費全額。但し,具体的看護の状況により増減することがある。」とされています。

しかし,職業付添人は実費全額とあることから,現実に介護をして支払っている金額が,裁判所においてそのまま認められるものではないことに注意する必要があります。
(赤い本2011年版下巻p13 山田智子裁判官講演録)

(2)裁判例の傾向
赤い本2004年版p337では,「1日あたり1万5000円程度までが通常と言えるようになってきています。」とされていました。

ところが,その後,後遺障害1級,2級では,相当幅があるものの,おおむね日額1万円から3万円の範囲で推移していたところ,近頃(注:2011年当時)では,後遺障害1級では1万5000円から1万8000円のものが多くなり,中には月額2万円あるいは2万円超のものが見られます。
(赤い本2011年版下巻p12,13 山田智子裁判官講演録)

その点で,「相場」が形成されつつあるという状態です。

なお,高次脳機能障害では,3級以下であっても,介護を認める場合がありますが,2級の金額水準を超えることは難しいとされています。

高次脳機能障害の場合はこちらの記事をご覧下さい。
高次脳機能障害における介護 (リンク)

3 近親者が介護する場合の金額は,どのくらいになりますか。  (クリックすると回答)


(1)一般的実務基準
赤い本2015年版p22では,「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。」として「近親者付添人は1日につき8000円。但し,具体的介護の状況により増減することがある。」とされています。

2002(平成14)年までは「1日につき6500円」であったのが,介護保険の開始以降は職業付添人の費用が高額化してきていたこととのバランスをとったとされています。

(2)裁判例を通しての具体的基準
一般的な基準では,介護の状況により増減があるとしております。介護の状況とは,常時介護か随時介護か,介護の具体的内容,介護者の実働あるいは拘束時間,危険性等の総合的なもので判断されていると思われます。
しかも,「常時」「1日」という抽象的なものではなく,もっと実質的な判断をしております。

①身体の大きな17歳男子の排泄障害等1級3号後遺障害の近親者介護料として母67歳まで両親二人分日額1万2000円を認めた判決
(大阪地裁平成18年4月5日判決 自動車保険ジャーナル・第1639号)があります。
この判決は,日額8000円を超える「高額」事案として引用されることがあります。しかし,被害者が若年であり,四肢麻痺と高次脳機能障害であることに加えて排泄障害がある状態から,両親の介護の苦労を考えると,決して例外的とまでに「高額」とは言えないと考えます。

②「常時介護」=1級「随時介護」=2級という公式にとらわれずに,排泄障害を伴う後遺障害3級で随時介護としながら日額8000円を認めた判決
(東京地裁平成21年11月12日判決 自動車保険ジャーナル・第1816号)があります。

この場合には,実際に介護をする近親者である母親の年齢を考慮して近い将来に職業付添人に代わる可能性があることも理由になっています。

③大阪地裁平成10年3月26日判決 自動車保険ジャーナル・第1268号では,
「自宅改造により介護の内容は相当程度軽減されるから,将来の近親者介護費用は,1日あたり2500円が相当」と自宅改造による介護負担の軽減が将来介護費用の減額の理由とされています。

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