既存の軽度認知症であった被害者(主婦)の後遺障害1級に対する減額割合についての判決です。

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脳梗塞で軽度認知症であるもADL(日常生活動作)は自立して夫と2人暮らしの家事に従事する72歳女子について,既存障害を7級4号相当としました。
その上で,逸失利益についての労働能力喪失率は40%として,後遺症慰謝料は本人固有は1500万円とし,それ以外に近親者各100万円(計200万円)を認めました。
しかし,既存障害を理由に45%の素因減額をしました。

大阪地裁 平成14年8月29日判決(確定)
事件番号 平成13年(ワ)第1408号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1479号
(平成15年2月13日掲載)

【事実の概要】
脳梗塞で軽度認知症であるもADL(日常生活動作)は自立して夫と2人暮らしの家事に従事する72歳女子の原告です。
平成11年4月16日午前9時55分ころ被告運転のワゴン車に固定されて車椅子で同乗中,Z原付自転車と出合頭衝突し放り出され,顔面打撲,鼻骨骨折等で268日入院して1級3号の後遺障害を残しました。
判決は,既存障害の脳梗塞後の軽度認知症を7級として事故後の1級3号に対する加重障害として,認定しました。
事故前に原告は,デイサービス・ショートステイなどの介護サービスを受けていましたが,夫との2人暮らしでADL(日常生活動作)は,ほぼ自立して行うことができたことから既存障害としては,7級4号に該当する程度で一般人の2分の1程度に労働能力が低下していると認定したものです。
そこで基礎収入について,休業損害は賃金センサス65歳以上の平均年収の5割,逸失利益は同じく4割としました。
なお,45%を素因減額しました。



【コメント】
原告は,本件事故当時,多発性脳梗塞及び軽度痴呆の既往症が存したものと認めることができるが,ADLはほぼ自立しており,また,家事労働についてもほぼ一人でこなすことができる状態でした。
しかし,本件事故後に寝たきりの期間が長期化して認知症が悪化して1級3号となったものです。
自賠責は,加重障害の考え方通り,既存障害を3級3号該当として1級と3級の差額とすべきところ併合の7級4号での保険金を下回るために,7級4号での自賠責「保険金」を認定しました。
本件判決は,自賠責とは異なった判断をしました。
裁判所としての原告の日常生活動作から事故前の労働能力の程度を判断して,事故後の労働能力喪失率を認定したものです。

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