顔面神経麻痺の逸失利益に関する判決です。

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顔面神経麻痺など12級相当の後遺障害を残す事案で,実収入を基礎に67歳までの逸失利益が認められました。


神戸地裁 平成6年6月30日判決

<出典> 交民集27巻3号858頁 判例タイムズ875号

【事案の概要】  (クリックすると回答)


被害者(営業部長の職に就く54歳男子)が,事故で頚椎捻挫,外傷性顔面神経麻痺を受傷して,顔面神経麻痺等により12級相当の後遺障害を残しました。

そのため,対人交渉を行なうことに支障を来したとして,実収入を基礎に67歳までの逸失利益を求めたものです。

【判決の趣旨】  (クリックすると回答)


被害者には現在においてもなお舌の痺れ,右眼の開閉困難,痛み及び易疲労性,口角下垂等の症状が残存していること,被害者がこれまで一貫して営業担当者として仕事を続けてきており,同職種に従事する者にとっては右症状の存在は仕事上の支障になり得るものであることは前記認定のとおりである。
また,被害者は,平成2年7月頃に会社を退職した後,他の営業関係の仕事を探したものの,顧客との応対に不都合であるなどとして不採用となったことがあり,また,現在も,右眼の開閉困難や易疲労性のため,長時間にわたる 自動車運転等できないことが認められる。

被害者は,右顔面神経麻痺による後遺障害のために現実に労働能力の低下が生じていると認めることができ,そして,その程度については,右後遺障害の部位と内容,その回復の状況等からみて,自賠法施行令後遺障害等級12級12号(現在の12級13号)「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すると認めるのが相当である。

そして,以上の各事実といわゆる労働能力喪失率表所定の喪失割合をも斟酌して考えると,被害者は,前記症状固定時(満54歳)から就労可能な満67歳までの13年間にわたって,右後遺障害によってその労働能力を14%喪失したと認めるのが相当である。

【コメント】  (クリックすると回答)

本件の被害者には「舌の痺れ,右眼の開閉困難,痛み及び易疲労性,口角下垂」等の顔面神経麻痺(末梢障害) の典型的な症状が見られています。
この点については,判決は,顔面神経麻痺として12級12号(現在の12級13号)に該当するとしています。

そして,後遺障害として労働能力喪失があるとして逸失利益を肯定しています。
それは,営業担当として対人交渉に当たることを理由としています。
さらに,局部の神経症状として12級12号(現在の12級13号)でありながら,10年間等と期間を区切ることなく67歳までを労働能力喪失期間としたことが,注目されます。

このことは,捻挫による神経症状以外にも及ぶ考え方であるのか,あるいは,対人交渉という職種に限定した考え方であるのか,今後の検討が必要です。

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