コンパートメント症候群等による神経損傷が原因として後遺障害5級を認定を認めた判決です。

[コンパートメント症候群,労働能力喪失,可動域,後遺障害,復職,用廃,粉砕骨折,腓骨,膝関節,自動,足関節,逸失利益,開放骨折,7級,8級]

開放粉砕骨折等負った事故の外傷,あるいはギプス固定等の圧迫によりコンパートメント症候群から,併合5級後遺障害を認定しました。

逸失利益につき,事故後復職,収入増加しているが,「特段の努力や経済的負担」をしており,昇進,転職に対する不利益等から,実収入を基礎に67歳まで労働能力喪失率を52%として認定しました。

大阪地裁 平成20年9月8日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1781号(平成21年5月7日掲載)

【事案の概要】   (クリックすると回答)


被害者(当時,34歳男子大卒上場企業会社員)は,自動二輪車で進行中,乗用車に衝突され,右下肢開放粉砕骨折等で8級右足関節用廃等併合5級後遺障害となりました。

判決は,「被害者の障害は自動値をもって評価する」とし,「事故時の外傷,あるいはギプス固定等の圧迫によるコンパートメント症候群を発症」として,

8級7号右足関節障害,
10級11号右膝関節障害,
9級15号右足趾障害,
13級9号右下腿短縮,
12級5号骨盤変形
の併合第5級に相当する後遺障害と認定しました。

被害者は,症状固定後復職,収入は「増加している」が,右膝の状態維持のため,毎日2時間以上の筋力トレーニング等を余儀なくされている,通勤の負担が大きく,タクシーを利用することがしばしばある等,「特段の努力や経済的負担をしている」ことに加え,昇進,転職への不利益がある等から,労働能力喪失率を52%として(7級と8級の間),後遺障害逸失利益を認定しました。

【判決の趣旨】  (クリックすると回答)


(コンパートメント症候群)

本件では,被害者の傷害が,下腿筋の広範かつ高度な挫滅を伴うものであり,受傷後ないし安静期間中に筋が癒着したことも考えられること,
骨接合術施行後の診断書に腓骨神経損傷との診断が記載されていること,
治療経過において筋挫滅に伴うものと考えられる右下腿後側部から足底部にかけての疼痛や骨折部から末梢の知覚異常等の訴えが持続し足趾伸筋腱の拘縮が強く右下腿の筋萎縮,筋力低下等も改善せず,鉤爪趾ないし槌趾の状態がみられるなど,一貫した症状が所見されていること,
神経伝導速度検査結果により脛骨神経損傷が疑われ,その支配領域の麻痺の指摘もされていること,
神経学的検査結果も整合性のあるものであること,
足関節の関節可動域の各測定結果は,おおむね近似したものであることなどが認められる。

これらを総合すれば,被害者は,本件事故時の外傷,あるいはギプス固定等の圧迫によるコンパートメント症候群を発症するなどして,腓骨神経損傷による同神経麻痺を生じ,これに脛骨神経麻痺や,広範かつ高度な筋挫滅及び癒着,長く遺残した足関節や足趾の拘縮の影響が加わるなどして,足関節及び足趾の用廃(以上のとおり,腓骨神経麻痺を中心とし,これに脛骨神経麻痺等が加わって運動機能障害を生じているものと解される。

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【コメント】  (クリックすると回答)


足関節及び右足全趾の用廃とコンパートメント症候群の関係について,
被害者は,足関節及び足趾の用廃は,腓骨神経麻痺によるものとして,その麻痺の要因としてコンパートメント症候群を一つに挙げています。
それ以外にも外傷そのものによる神経損傷も理由としています。
これに対して,加害者である被告は,コンパートメント症候群の発症そのものを争いました。
判決は,「被害者の腓骨神経損傷の原因は必ずしも明らかでないといわざるを得ない」ことから,コンパートメント症候群のみではなく被害者の主張するとおり,外傷そのものにも要因があるとして,被告の主張を否定する判断をしています。

コンパートメント症候群の発症そのものについて肯定も否定もせずに,大きく外傷による神経損傷が発症して,足関節等の用廃が生じていると認定しています。

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